シリーズ①
今回のケースは入退院を繰り返した末期がんの患者がいよいよ家に帰るのが最期になりそうなタイミングでの話し合いです。参加者は、家族(息子)と主治医の2人の話し合いです。
退院のお迎えのために今日来てもらう予定でしたが、昨日高熱が出てしまいました。とても残念ですが、今日の退院は延期して治療を行わなければなりません。
そうですか。
最近の状態を説明すると、入院後体力もどんどん落ちてきていて、今はトイレはオムツで、体の起き上がり、食事の準備だけでなく、食べることもお一人ではできず、看護師が手伝っている状態です。
そんなに悪いのですか。入院前はそこまで悪くなかったですが、、。退院後も誰かがしないといけないということでしょうか。
ご家族の手伝いが必要になると思います。
これまでしてこなかったからできるか不安です。あと、退院後状態が悪くなったら心配です。しっかり良くなってから退院してほしい。
病気の状態から考えてしっかり良くなることは残念ですが期待できません。安定したチャンスで退院し、家で家族と過ごすのが本人にも家族にもベストの選択ではないかと考えます。次に入院してくるときは家に帰れない可能性も十分に考えられます。良くなるというか落ち着いたタイミングで帰宅してもらうのがいいと思います。
そうですか。でも、退院後に状態が悪くなったらどうしたらいいでしょうか。
以前も訪問看護師、訪問診療を利用されていましたよね。これまでも利用していた訪問診療の先生や訪問看護師ならばすぐに来てくれるのではないでしょうか。
来てくれるかもしれない。でも、訪問診療の先生は来て父のちょっと顔を見て確認するとすぐに帰ってしまいます。よく診てくれているのかよくわからない。
そうですか。本当に状態が悪い時なら訪問診療の先生も救急車を呼ぶように手配するはずだと思います。
そうかな。日ごろから主治医の先生に本人のことを診てほしいです。
私も本人さんが癌になられてから付き合いも長いし、信頼してもらえているのはうれしい。しかし、この病院は急性期の病院で状態の安定した患者にずっといてもらうことはできないのです。
そうですね。でも不安です
外来では定期的にきちんと診せてもらいます
わかりました。
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診断や治療をメインに行った先生に引き続き診てもらいたいという家族のよくある、医療者側も同情できるケースです。
訪問診療の先生は患者の状態が安定しているときに診察するため大きな検査や治療を行う必要がなく、家族の信頼が病院の先生に偏ってしまいがちです。
このようなことを改善するために、最近では退院時に訪問診療の先生を交えて家族、主治医と話し合いの場を設けることがあります。
また、コロナのせいで面会ができずにいたため患者が徐々に弱っていく様子を家族が立ち会えなかったため変化の大きさに家族が驚いているのも特徴です。
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